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2025.05.15
獣医師
こんにちは。獣医師の太田です。
暦の上では初夏となり、陽射しも夏めいてきましたが、梅雨入り前の爽やかな風を感じながら、のびのびと愛犬とお散歩を楽しまれている方も多いのではないでしょうか。
今回は中高齢の雌犬に多い病気「子宮蓄膿症(しきゅうちくのうしょう)」についてお話ししたいと思います。
この病気は進行が早く、命に関わる救急疾患です。
予防法や治療法、早く気づいてあげるためのポイントについて紹介していきますので、大切な愛犬を守るためにぜひ最後までお読みください。
◆子宮蓄膿症ってどんな病気?
子宮蓄膿症とは、子宮の中に膿がたまる病気です。
避妊手術をしていない雌犬に見られ、子宮内に貯溜した細菌が産生する毒素によって重篤な症状が引き起こされます。
特に6歳以上での発症が多いことが知られていますが、実際には若齢で発症することもあるため、どの年齢でも気をつけなければいけない病気ということを知っておく必要があります。
また、子宮蓄膿症はその発症にプロジェステロンという発情後に分泌されるホルモンが深く関係していることが明らかになっています。
そのため発情がきた後、1〜2ヶ月以内に発症すると考えられています。
◆こんな症状に要注意!子宮蓄膿症でよくみられる症状たち
・元気食欲の低下
・発熱
・多飲多尿
・嘔吐
・腹部膨満
・陰部からの排膿(ただし、見られないことも多いです)
※外陰部からの排膿が認められる開放性子宮蓄膿症は発見が容易ですが、排膿が見られない閉鎖性子宮蓄膿症の場合には、適切な検査を行わなければ見逃されてしまうこともあります。さらに、閉鎖性の場合には、症状が急激に悪化することも多いです。
◆診断と治療について
血液検査やレントゲン、エコー検査で診断します。血液検査では白血球の上昇や炎症マーカーの上昇、レントゲンやエコー検査などの画像検査では子宮の形状や拡張の有無、内容物の見え方を確認します。
特にエコー検査は有用で、血液検査と合わせて確定診断に使用されます。
写真:拡張して液体が貯留した子宮。右では子宮内膜の肥厚が認められます。
治療の第一選択は外科手術(子宮・卵巣摘出=避妊手術)です。
点滴や抗生物質で状態を安定させつつ、緊急手術を行うケースが多いと言えます。
場合によっては子宮から膿液が漏れ、腹膜炎を起こしていることもあり、そういった時には腹腔内洗浄などの適切な処置が必要となります。
しかし、子宮蓄膿症は高齢で発症することが多いため、他にも基礎疾患を持った子が罹患する可能性もあります。
そういった子は、全身麻酔によるリスクが高いために手術の実施が困難な場合があります。
そのような場合には内科治療を行うこともあります。
内科治療には抗生剤やホルモン剤を使用しますが、治癒までに時間がかかることや、治癒率が手術に比べて低いこと、再発する可能性があること、などの問題点があります。
また、腹膜炎等の重篤な症状が起きてしまっている場合には効果が低いことが予想されるため選択が推奨されません。
◆予防法は?
最も確実な予防方法は、避妊手術です。避妊手術(=卵巣子宮摘出術)を行うと、そもそも子宮が無くなるため100%防げます。
また、早期の避妊手術は子宮蓄膿症の予防だけでなく、乳腺腫瘍の発生率を低下させたり、偽妊娠や発情に伴うストレスを無くしたりといったメリットがあります。
当然ですが、病気になって変化した子宮を手術で取り除くよりも、健康な状態での手術の方が安全で術後の回復も早く済みます。
◆最後に
今回は子宮蓄膿症について紹介させていただきました。見逃してしまったり、放置してしまうと、子宮破裂や敗血症、多臓器不全など、短期間で命を奪うこともある怖い病気です。
早期発見・治療で回復も早い病気ですので、様子がおかしいなと感じたら、まずは動物病院で診察を受けましょう。
定期的な健康チェックと、必要に応じた避妊手術の相談もおすすめします。
避妊手術については、それぞれのご家庭で、わんちゃんたちとの関係性や思いがあると思います。
ご家族のお気持ちに寄り添って、納得して選択するお手伝いをしたいと考えています。
現在、予防シーズンということもあり、予防と一緒に健康チェックをご希望されるオーナー様も多くいらっしゃいます。
避妊去勢手術についてだけでなく、なんとなく後回しにしていた疑問や心配事があれば、ぜひお聞かせください。
私事ですが、先日、私の地元の北海道で友人宅にお邪魔してBBQをしました。
その際にグレートピレニーズの子と遊んだのですが、日差しが気持ち良くとてもいいリフレッシュになりました。
1枚目の写真はお庭の入り口ゲートから身を乗り出して出迎えてくれている姿になります。なんとも言えない哀愁があって可愛かったです。
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