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2023.06.15
獣医師
こんにちは、獣医師の今瀬です。
梅雨に入り、蒸し暑い日々が続いていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
夏風邪も流行っていますので、体調管理にお気をつけ下さいね。
さて、今月は猫の変形性関節症についてお話させていただきたいと思います。
変形性関節症とは?
骨と骨のクッションの役割をしている軟骨に過度の負担がかかることで次第に関節が変形し、
慢性的な痛みや、動作に困難が生じる関節疾患です。
猫の変形性関節症は、
・加齢
・肥満
・外傷
・遺伝
・過度の運動
・関節不安定症
・繰り返す亜脱臼や脱臼
など、様々な要因が関与して起こります。
関節軟骨に過度な負担がかかると、軟骨に摩擦が起こり、軟骨構成成分が変化(変性)します。
徐々に軟骨がすり減ると、関節炎を発症し、痛みが出はじめます。
そして、関節の可動域が減少し、動作に困難が生じてきます。
さらに軟骨がすり減ると、骨同士がこすれ合い、骨が変形してしまい、激しい痛みになっていきます。
関節炎の出やすい部位は、
①手根(手首)
②肘
③膝
④足根(足首)
⑤股関節
⑥肩
⑧指
の順です。
この病気ですが、
なんと!
1歳以上の猫ちゃんの約74%、12歳以上の90%に変形性関節症があるとも言われています!!
しかし、猫の変形性関節症は、兆候が分かりにくく、飼い主様が気づかないことが多い疾患です。
猫は本能的に痛みを隠す動物で、痛がる様子をみせないので、歳のせいで動きが鈍くなったのかしら?などと勘違いされやすいのですが、日常のちょっとしたしぐさが痛みのサインのことがあります。
痛みのサインを見逃さないように、日頃からよく観察してみて下さい!
痛みのチェックリスト
・階段を登る時、
うさぎ跳び(後ろ足を同時に跳ねて登る)したり、休憩する。
・階段を降りる時
体を横向きにして一段づつ降りたり、休憩する。
・動くものを追いかけるとき
途中でゆっくりになったり休憩する。
・ジャンプするとき
飛び乗る前にためらう。1回のジャンプで届かず、前足をつけてから後ろ足を引き上げる。
・飛び降りるとき
飛び降りる前にためらう。大きくジャンプしない。地面に前足を伸ばして降りる。
・走る時
全体的に動きが遅く、歩きと早歩きを交互にする。
・その他にも…
気性があらくなった
体を触ると嫌がるようになった
おもちゃにじゃれなくなった
トイレの外で排泄する
物陰に隠れたり、逃げたりする
動きがゆっくりになった
グルーミングが減った
おとなしい
食欲が落ちた
睡眠時の姿勢が変わった
目を細める
などの変化にも、痛みが隠れているかもしれません。
皮膚にできた腫瘍を切除するために手術前の検査をした猫ちゃんのレントゲン写真です。
股関節と膝関節に重度の変形性関節症があり、偶然みつかりましたが、飼い主様は、足の痛みには気づかれていませんでした。
このように、レントゲンを撮った際に偶然写ってきて見つかることも多いのです。
痛みは、放置すると猫ちゃんのQOL(生活の質)も下がり、さらに関節炎も悪化しますので、早期に痛みを和らげ、身体機能を維持、改善してあげましょう!
治療ですが、
①体重のコントロール
②痛みの緩和
③運動の促進
を軸に、プランを立てていきます。
痛みの緩和には、従来、消炎鎮痛剤のNSAIDsというお薬を使用していましたが、腎臓や肝臓、胃腸に負担をかけるため、長期にわたる投与はできませんでした。
しかし、2023年2月から抗NGF抗体という新しい作用機序のお薬が導入され、治療の選択肢が増えました!
こちらのお薬は、ひと月に1回の注射薬なので、毎日の投薬ストレスがなくなります。
そして、腎臓、肝臓、胃腸への影響が最小限ですので、初期の腎不全の猫ちゃんにも使用できます!
オメガ3脂肪酸も炎症反応を減らすのに効果があり、食事やサプリメントで摂取するのもおすすめです。
運動は、おもちゃで遊んであげたり、色々な高さの登りやすいキャットタワーなどで遊べるようにし、無理ない範囲で積極的に動き回らせて関節を動かしてあげましょう!
そして、生活環境についても見直してみて下さい。
・ご飯やお水の器は使いやすいですか?
・ベッドは使いやすいですか?
・キャットタワーは上りやすいですか?(スロープや階段は必要ですか?)
・トイレの入り口は高くないですか?
・トイレは入りやすいように、複数ありますか?
早期に病気に気づいて、痛みを和らげて、心身ともに健やかに過ごしていけるといいですね!
さいごに
梅雨の合間に趣味のキャンプに行きました。山はいいですね!
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