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2025.08.15

獣医師

若い時の犬と猫の骨折に注意

こんにちは獣医師の岡村です。

 

 

今年の夏も暑く、病院内もエアコンだけじゃ室温がさがらない季節がやってきました。

 

 

今月は若齢のわんちゃん猫ちゃんの骨折についてです。

 

 

 

 

若い犬や猫は骨が柔らかくしなやかで、成長期特有の構造を持つため、成犬・成猫よりも骨折の危険性が高い時期です。

 

 

特に生後数か月から1歳半頃までは骨の端に「成長板(骨端線)」と呼ばれる軟骨部分があり、骨を長く伸ばす重要な役割を担っています。

 

この成長板は硬い骨に置き換わる前のため非常に脆く、少しの衝撃でも損傷しやすい部位です。

 

ジャンプの失敗、ソファや階段からの落下、フローリングでのスリップなど様々の要因で損傷を起こします。

 

 

成長板損傷は、見た目の症状が軽くても重大な後遺症を残す可能性があります。損傷部位によっては骨の成長が途中で止まったり、成長のバランスが崩れたりして脚の長さに左右差が生じたり、関節の角度が変わる「変形治癒」が起こります。

 

 

また、成長板損傷は骨折してない場合でも起こることがあり、レントゲンで判断できないことも多いです。

 

 

 

成長板を含む骨折として重要なのがソルター・ハリス骨折で、以下の5型に分類されます。

 

•Ⅰ型:成長板で骨が分離(関節面は含まれない)

 

•Ⅱ型:成長板と骨幹部が骨折(最も多い)

 

•Ⅲ型:成長板と関節面が骨折(関節面整復が重要)

 

•Ⅳ型:骨幹部から関節面を通り成長板まで骨折(関節機能と成長の両方に影響)

 

•Ⅴ型:成長板の圧迫損傷(診断が遅れやすく成長障害のリスク大)

 

 

特にⅢ型とⅣ型は関節内骨折を伴い、関節面にわずかな段差やずれが残るだけで、成長後に関節変形や変形性関節症を引き起こす可能性があります。

 

 

 

 

若齢犬の骨折で最も多いのは橈尺骨骨折です。

 

特に小型犬で前肢の骨が細いため、段差からの飛び降りや抱っこ中の落下でも発生しやすく、プレートやピンでの固定が必要になることが多いです。

 

 

 

 

 

しかしこの部位は血流が乏しく癒合が遅れやすいため、プレートの破損、ピンの突出、感染、再骨折などの合併症が比較的多く見られます。

 

猫では高所からの落下による大腿骨や脛骨の骨折も多く、交通事故による多発骨折や骨盤骨折もしばしば見られます。猫は犬よりも骨折後も動こうとする傾向が強く、術後の安静管理が難しい点も特徴です。

 

 

骨折手術には、固定具の破損、感染、癒合不全などの合併症に加え、若齢期特有の懸念があります。

 

それは社会化期の入院による影響です。

 

犬では生後3〜14週、猫では生後2〜9週頃が社会化期で、この時期に長期入院や安静を余儀なくされると、人や他の動物との関わりが不足し、将来的に警戒心や恐怖心が強く出る可能性があります。

 

 

また可愛いパピーの時期をお家で見れないのは悲しいと思います。

 

 

なので大前提として骨折させないように予防することが大事です。

 

 

予防のためには、滑りやすい床にマットを敷く、ソファやベッドからの飛び降り防止、階段への柵設置など、家庭環境を整えることが第一歩です。

 

猫では窓やベランダの脱走防止、高所へのアクセス制限も重要です。

 

また、成長期は関節や筋力が未発達なため、過度なジャンプや急激な運動は避けましょう。

 

もしそれでも犬を落としてしまったり、高いところから飛び降りてしまって足がつかないなどの症状がある場合はすぐに病院を受診しましょう。

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