もりやまTOPICS

TOPICS

  • HOME
  • もりやまTOPICS

2024.04.30

獣医師

猫も風邪をひく!? 気をつけたい猫風邪の症状

こんにちは、獣医師の太田理仁です。

すっかり暖かくなり、新年度が始まりましたね。

 

当院にも新しいスタッフが加わりましたので、より充実した獣医療とホスピタリティを提供できるようしていきたいと思います。

 

 

さて、春といえばお花見や入学式など華やかで明るいイベントが思い浮かびますが、

環境が変わることや人の集まる行事で気をつけたいのが感染症です。

 

 

新型コロナウイルス感染症は私たちにウイルスの存在と恐ろしさをあらためて認識させましたが、

動物たちに も私たちと同様にウイルス感染症が存在しています。

 

 

猫に多い感染症に、いわゆる猫風邪があります。

 

 

今回は、猫風邪としてまとめられている感染症のうち、特に関与が大きいと考えられている

 

「猫ヘルペスウイルス感染症」についてお話ししたいと思います。

 

 

 

◎猫風邪(猫ヘルペスウイルス感染症)とは

 

猫ヘルペスウルス感染症は呼吸器症状を中心とする感染症ですが、原因となるウイルス は猫ヘルペス 1 型(Feline herpesvirus-1 : FHV-1)です。

 

ネコ科動物に強い感染力をもち、感染猫の鼻水や涙、涎などが直接またはエアロゾルが口 や鼻、粘膜に接触することで容易に成立します。

 

食器やトイレの共有、グルーミング、寝 床の共有なども問題となります。

 

このウイルスのやっかいなところは、一度感染が成立すると、神経核内に潜伏する性質があり、

治癒した後であってもその体内に潜み続けることから一生涯キャリアとなってしまうという点です。

 

ヘルペスウイルスのこのような性質は人間のヘルペスウイルス感染症 でも同様のため、ご存じの方もいるのではないでしょうか。

 

 

◎猫風邪の症状

 

猫ヘルペスウイルス感染症に罹患した猫ちゃんは、風邪に類似した様々な症状が認められます。

 

通常 3~4 日間の間に以下のような症状が認められることがあります。

 

 

・くしゃみ、鼻水:猫風邪の最も代表的な症状です。鼻の周りや目の下に鼻水がつくこと もあります。

 

・発熱:通常猫ちゃんの体温は 38~39°C程度ですが、猫風邪の場合にはそれ以上に上がる ことがあります。

 

・口腔内潰瘍:口の中に潰瘍やただれができることがあります。

 

・食欲不振:症状が進行すると、口内の痛みや不快感が原因で食事を拒否することがあります。

 

・目の炎症:目の周りに炎症や赤みがみられることがあります。結膜炎や角膜潰瘍が発生 することもあります。

 

 

これらの症状は通常はその後 1 週間程度で回復しますが、特に免疫力が不完全な幼猫ち ゃんや持病のある子、そして老猫さんは重症化するリスクが高く、脱水や衰弱が激しいと 生命に危険を及ぼす可能性もあります。

 

 

◎猫風邪の診断

 

猫ヘルペスウイルス感染症の確定診断には一般的には猫の鼻や口の分泌物からの検体 採取や血液検査を行い、

PCR 検査や抗体検査を実施します。

 

これにより、ヘルペスウイルスの DNA や抗体の存在が確認されます。

 

ただしこれらの検査には時間を要するため、症状や臨床兆候に基づいて獣医師が診断を行うこともあります。

 

 

◎猫風邪の治療

 

猫ヘルペスウイルス感染症の治療は、免疫力を高めていくことと、症状の軽減を目的とし た対症療法が治療方針となります。

 

免疫力を高めるために、インターフェロンや L-リジンの投与はよく行われる治療法です。

 

対症療法としては、ご飯や水が摂取できない場合には点滴や痛み止め、栄養補助食品や栄養剤を使用します。

 

鼻水やくしゃみなどの呼吸器症状がみられる場合にはネブライジングを行い、結膜炎や角膜炎などがみられる場合にはインターフェロン入りの点眼薬を使用したりもします。

 

また、細菌などによる二次感染が症状を悪化させてしまうことがあるため、抗生物質が処方されることもあります。



猫風邪を予防するためには

 

猫風邪(猫ヘルペスウイルス感染症)の予防には、いくつかの方法があります。

 

 

その 1.  ワクチン接種 猫ヘルペスウイルス感染症の予防には、ワクチン接種が効果的です。

 

猫ちゃんのコアワク チンプログラムには、猫ヘルペスウイルス(FHV)に対するワクチンが含まれています。

 

しかしながら、ワクチンを接種していても猫ヘルペスウイルスの感染や発症を完全に防ぐことは難しく、

あくまで重症化を防ぐためのものと言えます。

 

かかりつけの獣医師と相談 して、その猫ちゃんの年齢や環境に応じた最適なワクチンスケジュールを確立しましょう。

 

 

その 2. ストレス管理 ストレスは免疫系を弱める要因の一つです。

 

適切な環境を提供し、猫ちゃんのストレスを 軽減することで、感染症に対する抵抗力を高めることができます。

 

 

その 3.  衛生管理 猫ちゃんの飼育環境を清潔に保つことも重要です。

 

特に複数の猫ちゃんが同じ環境で生活 している場合は、定期的な清掃と消毒が必要です。

 

食器の定期的な洗浄や、トイレの清掃も忘れずに行いましょう。

 

また、温度計や湿度計を設置して環境をモニタリングするのも おすすめです。

 

 

その 4. 栄養バランスの良い食事 適切な栄養を摂取することは、猫の免疫機能を維持するために重要です。

 

高品質のキャッ トフードを与え、栄養バランスを保つように心がけましょう。

 

 

その 5.  定期的な健康チェック 獣医師の定期的な診察を受けることも予防策の一つです。

 

獣医師が猫の健康状態を確認し、 必要に応じて予防措置を講じることができます。

 

 

 

◎まとめ

季節の変わり目や、体調不良で免疫が下がった時に再発したり、感染を広げてしまう可能性のある

猫ヘルペスウイルス感染症(猫風邪)について今回はお話しさせていただきました。

 

 

前述のように、この感染症はワクチンを接種していても完全には感染を防ぐことは難しいのですが、

症状の軽減や発症期間を短くすることはできます。

 

そのためこのブログを読んでくださった猫ちゃんオーナー様にはしっかりとワクチン接種を行っていただき、

万が一感染してしまった場合や症状の再発があった場合には、早めに動物病院へ の来院をお願いします。




最後に、北海道の祖父母の家で可愛がっている猫のベルちゃんの画像でお別れしたいと思います。

叔母の愛猫なのですが、人懐っこくてとってもお利口さんです。獣医師として、ベルちゃんの健康も精一杯守っていきたいと思っています。





皆さんも、愛猫ちゃんともども健康に春の陽 気を楽しんでお過ごしくださいね!

 

何かご心配事があれば、いつでもお気軽にご 来院して相談ください。

Copyright©もりやま犬と猫の病院 All rights reserved.